以前スクワットに関連して膝周りについて検証しました。
今回はスクワットの姿勢について考えたいと思います。
スクワットの動作の中で、変数は足関節・膝関節・股関節の3つの角度のみです。
バーの中心と足の中心が平面方向で一致することを考えると、3つの関節角度の関係は幾何学的に決まってしまいます。
前提として。。。
まず日本人男性の平均的な体型を調べてみました。
- 平均身長:170cm
- 膝下長さ:50cm
- 腰の高さ:80cm
- 肩の高さ:135cm
- 頭の大きさ:25cm
ちなみに私はほぼ日本人男性の平均と同じプロポーションです。
あ、多少胴は長くて足は短いですけど。
これを踏まえると、次のようなプロポーションの人を描くことができます。
この人を動かすことにします。
スクワットをさせてみましょう。
こんな感じですね。
簡単のために、肩関節の位置でバーベルを持っていることにします。
バーベルの水平位置が重心位置とおおよそ一致しているので、バーベル位置と足の位置が
一致しているとバランスが取れていることにしましょう。
このバーベル位置と足の位置が一致する姿勢は足関節・膝関節・股関節の角度だけで
表現することができ、その範囲はプロポーションと可動域で決まってしまいます。
それぞれの関節の可動域は概ねこんなところかと思います。エイヤで決めました。
- 足関節屈曲角度:0度~45度
- 膝関節屈曲角度:0度~160度
- 股関節屈曲角度:0度~160度
これらを踏まえて、この人がスクワットした時、各関節の角度はどんな範囲に収まるのか、エクセルで計算してみました。
各関節角度の関係
縦軸が膝関節屈曲角度、横軸が股関節屈曲角度を示しています。
「膝をつま先より前に出すな」とよく指導されますが、実際には膝の位置は足関節の角度で決まります。
このグラフで示すところの20度以上は、「膝がつま先より前に出た」状態です。
ですので、赤のラインに近づけば近づくほど、膝関節中心のスクワットと言うことができます。
一方で、紫のラインは足関節が0度、つまり脛骨が鉛直の状態を示しています。
このラインに近いほど、股関節中心のスクワットと言うことができるでしょう。
足関節屈曲角度が大きくなればなるほど、つまり膝が前に出れば出るほど、バランスが取れる膝関節・股関節角度の範囲が小さくなっていることがわかります。
特に足関節屈曲角度が40度以上となると、膝関節・股関節でバランスが取れなくなります。
足関節と膝関節高さ/股関節高さの関係
膝関節の高さを股関節の高さで割った値をグラフにしてみました。
膝関節高さ/股関節高さが1.0の場合が、パラレルスクワットに相当するものと考えます。
足関節屈曲角度が10度の時をピークとして、25度以内であればしっかりしゃがめると言えるかと思います。
逆に30度を超えるとしゃがみづらくなっており、パラレルまでしゃがむのにも辛くなってくることが確認できます。
以上のことから足関節屈曲角度を小さい値でコントロールすることは、スクワットをする上で重要であると考えられます。
股関節と背骨に作用するせん断力の関係
一方で、足関節屈曲角度を小さくした場合の注意点を紹介しようと思います。
以下は足関節屈曲角度と背骨に作用するせん断力の関係です。
せん断係数は単位重量あたりに作用するせん断力を示しています。
例えば100kgのバーベルを担いでいて、せん断係数が0.1なら10kgのせん断力が作用しています。
これによると、足関節屈曲角度が小さければ小さいほど背骨に作用するせん断力が大きくなります。
また、パラレルの位置まではせん断力が大きくなる傾向があります。
特に足関節屈曲角度が0度の場合はしゃがむにつれて急激にせん断係数が大きくなり、最終的にパラレルの位置でせん断係数は最大値0.55となっております。
つまり100kgのバーベルを担ぐと55kg分は背骨をせん断する力として作用します。
せん断力に関する考え方は以下の記事が参考になります。
changebodycomposition.blogspot.com
スクワット時に適切な足関節角度について
簡単に言うと、足関節屈曲角度が0度の場合は「しゃがめばしゃがむほど背中がキツく」なります。
スクワットをする目的にもよりますが、開始時には作用していない負荷が動作中に急激に増加する状態は、個人的には望ましくないと考えます。
似たような姿勢はデッドリフトの場合でも存在します。
ただデッドリフトの場合は開始時に最も大きなせん断力が作用しますので、持ち上げる前にリフト可能かどうかを判断することができます。
一方スクワットの場合はしゃがんだ時点で「あ、無理!」となりますのでデッドリフトより危険性が高いことになります。
かといって、足関節を大きく使うとバランスが取れなくなり何より膝への負担が増大します。
以上のことから、以下グラフの黒破線のように20度くらいまでは許容して、上手く膝と背中への負荷を分散しながらしゃがむのが一番良いのではないかと考えます。
続きまして、各部に作用する力の分布について考えましたので、以下の記事もお読み頂ければと思います。