筋トレ好きの人はどんどん筋肉の名称に詳しくなっていきます。大胸筋だったり、ハムストリングだったり、上腕二頭筋だったりですね。また、より詳しい人はそれぞれの筋肉の機能を覚えていきます。例えば大胸筋だと肩関節の内転、外旋動作などに使用されています。
しかし、剛性を高めるといった機能はあまり着目されていないと思います。このブログでは以下の記事で筋肉の物理的な機能として紹介しました。
要はぐっと力を入れると固くなるよ、という話です。しかしトレーニング関係のブログやSNSを見ている限り、この機能に着目した記事を見かけることが少ないので書いてみることにしました。
例えば脊柱起立筋群は、参考書では体幹部の伸展や側屈に寄与すると書かれてます。しかしデッドリフトでは、体幹の伸展を意識するよりかは、屈曲しないように脊柱起立筋に力を入れると思うんです。つまり、脊椎や関節が適切な可動域から外れないように剛性を高めて抵抗するような使い方をしているのです。
剛性という言葉はトレーニングの本にあまり出てきません。なぜなら一般的なトレーニングの本(有名なMark Rippetoe氏の本も含めて)で使用している力学は初等力学であり、剛体を前提とした運動力学だからです。つまり、下腿部・大腿部・胴体・腕に至るまでめっちゃ固いと仮定して、各関節で作用するモーメントのみで論理展開しています。
つまり、こうですし。。。
こうなのです。。。
この仮定は、大抵の部位で成立します。それは十分に固い骨が強度部材として存在するからです。そういった部位については安心して初等力学を適用することができます。ところが胴体については脊椎が椎間板を有していることから曲げ剛性がない部材となっています。この理屈を成立させるためには、腹圧や脊柱起立筋で、胴体が剛体とみなせるように固くする必要があるのです。
ですので、デッドリフトやスクワットの際に登場する腹圧や背中の筋肉が発揮する機能は剛体化のためであり、大腿四頭筋やハムストリング、大殿筋のように関節周りの回転モーメントに対して発揮する機能と異なります。この点はトレーニングで健康を得るためにも理解しておくべきと思います。
別項で具体的にデッドリフトやスクワットの際に、胴体にどのように力がかかっているのか、腹圧がかからないと力のかかり方がどう変化するのかについて、考えていきたいと思います。