ウエイトトレーニングにおいて腹圧のコントロールはとても重要です。先日のデッドリフトにおける考察でもご理解頂けるかと思います。
デッドリフトの際には曲げモーメントによる圧縮に対して、腹圧で抵抗しないといけません。今回は、この腹圧がどんな理屈で高まるのかを考えたいと思います。
まず「腹圧を高める」ということですので、「何か気体もしくは液体で満たされた密閉された空間」がないといけません。
風船と同じで、穴が空いているといくら力を入れても中の空気が漏れてしまうので、内部の圧力が高めることはできません。
腹圧とは略称で、正確には「腹腔内圧」といいます。腹腔とは以下の通りです。
どうやら、男性の場合は完全に閉鎖されているようです。女性の場合も卵管で外と繋がっているようですが、細いところは直径1mm未満とのことですので、閉鎖されていると考えて良さそうです。
この腹腔は「横隔膜」「骨盤底筋群」「多裂筋群」「腹筋群」でおおわれていて、収縮・弛緩を組み合わせることで形状を変化させることができるようです。例えば、横隔膜が収縮することで、腹部が前に張り出します。横隔膜が弛緩することで、腹部が凹みます。
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ただ、これだけでは腹圧が十分に高まることはありません。
気体の圧力を考える際の道具として、ボイルの法則があります。「PV=一定」というやつです。内部の質量と温度が一定の場合、P:圧力とV:体積を掛けた値は一定になります。つまり、体積が変化しなければ圧力が変化することはありません。上の絵をもう一度見てください。息を吸った時に、横隔膜は収縮して体積を小さくなる方向に活動していますが、腹筋群と骨盤底筋群は引き伸ばされています。腹腔が圧力が変化しないように
体積を維持しようとしているのです。息を吐いた時は腹筋群と骨盤底筋群は収縮していますが、今度は横隔膜が弛緩して、腹腔にスペースを与えています。
ですのでこのままでは腹腔の内圧を高めることができません。腹腔内圧を高めるには、以下のようにする必要があります。
なお腹腔内圧を高める際に、横隔膜、骨盤底筋群は収縮して一見力が入っていないように見えますが、実際のところきっちり張力が入っております。シェル構造といいまして、内部の圧力に抵抗する形で膜のような筋群には引張力が作用しており、それに対してアイソメトリックに抵抗した状態になっているのです。
ちょうど、LNGなどの圧力タンクと同様の状態になっています。