私は最近胸郭や胸椎に着目した動きに興味があり、色々と調べたりしています。胸郭については以下の画像を見てみてください。
以下が脊柱の画像です。
(*)Wikipediaから抜粋
脊柱は大きく頸椎(赤色)、胸椎(青色)、腰椎(黄色)、仙椎(緑色)と分けることが出来ます。そのうち頸椎が一番可動域が広く、胸椎、腰椎の順となります(仙椎は省略)。野球やソフトボールの技術指導で「腰を回して」とか、「下半身主導で上半身を遅らせて」といった発言がありますが、実際は腰椎の動きではなく、股関節と胸椎の可動性を主として実現することになります。
簡単に言うと、胸椎より下と、胸椎より上で「ねじれ」を作って、それが筋肉の張力で戻されるのを利用して、大きな力を発揮するのが良さそうです。私は最近までこの辺をイマイチ理解しておらず、特に胸椎の可動性を疎かにしていました。まだまだ勉強中ですが、頭の整理がてら、今時点で理解した範囲で紹介していこうと思います。
胸椎の可動域について
ここで、脊柱の可動域について確認してみます。
分類 | 屈曲 | 伸展 | 回旋 |
---|---|---|---|
頚椎 | 35deg~50deg | 80deg~95deg | 45deg |
胸椎 | 30deg~40deg | 20deg~25deg | 30deg |
腰椎 | 50deg | 15deg | 5deg |
(*)理学療法士によるRPPなどを参照
簡単に言うと、屈曲以外は頚椎>胸椎>腰椎の順に可動域が大きいと言えます。骨盤に近い腰椎は、上半身の重量を一手に受けます。そのため、せん断方向の力が頚椎・胸椎より大きくなる傾向があることから、太くズレにくい構造になっていると考えられ、曲げや回旋を許容しない構造になっていると推測されます。特に回旋は
5degとかなり小さく、ほぼ回らないと言って良いでしょう。
胸椎や胸郭と周辺の筋肉との関係
野球やソフトボールでは並進運動と回転運動を組み合わせて大きな力を生み出します。胸椎や腰椎の回旋は、回転運動の源の1つになっています。ただ前述の通り、主たる回旋は腰椎が生み出していると勘違いすると、腰痛の元になりがちです。実際に回旋するのは胸椎です。以下のようなシナリオで動いていると思われます。
胸郭・胸椎の周りには大胸筋や広背筋、腹斜筋等多くの筋肉があります。簡単に描くと以下のように位置しています。
この内、広背筋と腹斜筋は骨盤に付着しています。
前鋸筋や大胸筋は肩甲骨や上腕に付着しています。
以下は股関節を固定した状態で、胸郭を20度時計方向に回旋させた場合の図です。次のように筋肉は引っ張られます。
引っ張られた筋肉によって胸郭は引き戻されますが、肩甲骨と上腕にはやや時間差が生まれます。これにより前鋸筋、大胸筋が引っ張られます。
こんな感じで股関節から上腕まで力が伝達されているものと考えられます。
胸郭の回旋による力の発揮
単純に考えると、それぞれの筋肉は回旋すればするほど引っ張られて、力を発揮することになります。例えば広背筋と腹斜筋に着目して数式にしてみると、以下のようになります。
この時にそれぞれの筋肉が寄与する、胸椎周りの回転モーメントは次のようになります。
Rは胸郭の大きさと、筋繊維の太さに依存します。つまり胸郭が大きいかったり、筋肉が発達していると、その分だけ回転モーメントが大きくなるので大きな力を発揮することができます。
これらのことから、「胸郭を大きくすること」と「胸郭の回旋機能を高めること」はパフォーマンス向上に大きく寄与するものと思われます。
胸郭や胸椎に着目したおすすめトレーニング
胸郭が大きくするメリットはパフォーマンス向上だけではありません。内部の臓器も大きく成長する余地が生まれて、体そのものが強くなります。そんなこんなで、骨の柔らかい10代の内は、胸郭が大きくなるようなトレーニングを取り入れることをおすすめします。例えば以下です。
[胸郭を広げるトレーニング]
・プルオーバー
・ダンベルフライ
・ディップス
・ブリッジ 等…
また、骨が固まる20代以降でも胸郭が大きくなる余地があるそうですが、それ以上に胸椎が固くなりがちなので回旋機能の保持・改善を行う必要があるかと思います。ですので上記に加えて、例えば以下のようなトレーニングが必要です。
おわりに
私はいつの間にか胸椎の回旋機能を忘れ去ってしまっていて、パフォーマンスに支障をきたしていました。ああでもないこうでもないと苦悩していたのですが、ふとした瞬間に思い出して、上記のようなトレーニングをしたところ、想像以上にパフォーマンスが向上しました。いや長かった。
股関節の機能向上によるパフォーマンス向上は最近よく見かけるのですが、上半身の動きも大事だよということで。皆さんの気づきになれば幸いです。