こんにちは、きっちゃん(@I_am_Entraineer)です。
野球で過度な走り込みは不要と言われて久しいです。私が高校生のころはまだまだ走り込みが重要視されていましたが、
ダルビッシュ投手を初めとした現役選手が科学的なトレーニングを取り入れるようになり、大きく変わったように思います。
走り込みはこれまで「足腰を鍛えるため」とか、「心肺機能を高めるため」といった目的で取り入れられていたかと思います。
しかし、野球に必要な動きは瞬発的なものですので、長距離走で鍛えるよりはバーベルを持ってスクワットした方が、より目的
に沿っています。また、瞬発的な動きの繰り返しなので、心肺機能を高める必要は特段ありませんが、HIITなど短距離走を組み込んだ
メニューの方が効率が良いと思われます。
今ではすっかり走り込みの効用は色あせて、血流促進による疲労回復だったり、コンディショニング目的で活用するに留まっている
ような気がします。
とはいえ、昔の投手は走り込みを繰り返し、投げ込みを繰り返すことで体を作り上げているのです。そう考えると、走り込みには
もっと他に効果があったのではないでしょうか。
今回は本当に私の妄想です。軽い気持ちで読んでもらえると幸いです。
走り込みによる肩周辺への影響
先日、肩の外転角度と棘上筋、三角筋の筋力発揮について考えました。
このとき、外転角度0度では上腕頭骨を吊り上げるような力が必要と説明しました。
この吊り上げる力は何によって得ているのでしょうか?筋肉や靭帯、あるいは関節包などで複合的に力が働いて上腕骨は吊り下げられているようです。実際、前回は無視してしまいましたが腕は案外重くて、片腕で体重の6%程度あるそうです。私の体重は70kgですが、4kg程の重りが吊り下がっていることになります。
そうすると、走っている際は足からの衝撃で肩にもそれなりの負荷がかかっているはずです。そこで、「長距離ランナー 肩 痛み」で検索してみると、、、
結構出てくるんですよね。ランニング動作は肩周辺への影響があるということです。
肩周辺に作用する力
実際どのくらいの力が作用しているのでしょうか?計算してみようと思います。下手ですけど、以下がランニングの様子。
体の重心は上下に動いています。着地から足が離れるまでの間に、体は上向きの力を受けて押し上げられます。この際に、受けた力で加速度が発生しますが、この加速度が慣性力となって肩関節に作用する、という理屈です。
ということで、今回は以下のような作戦で力を計算してみたいと思います。
跳ね上がりによる重心の上下変動幅h1の計算
↓
鉛直方向成分速度vの計算
↓
速度と接地時間から、加速度aを計算
↓
腕に作用している鉛直方向の力を計算
重心の上下変動幅
跳ね上がりによる重心の上下変動幅h1は、滞空時間から求めることができます。最近は滞空時間を計測できるウエラブルデバイスがあるので、
そういうのを使うとランニング中の上下動が確認できます。今回は以下のサイトを参考に、0.14秒ということにしようと思います。
「メダル候補たちの武器」野口みずき - 北京オリンピック : nikkansports.com
重心の上下の変動幅hは、以下の式で得る事ができます。
滞空時間が0.14秒の場合、約24mm重心が空中で上下していることになります。
鉛直速度成分
足が地面から離れるときの速度が、鉛直方向に最も速度が大きい状態と言えると思います。このときの速度vは、
エネルギー保存則により求めることができます。
重心の上下変動幅h1は24mmでしたので、鉛直速度vは約0.69m/secとなります。
加速度
体は速度vで落下してきて、接地時間を使って体に力を作用させて、速度vで飛び出していきます。このことから、力積の考え方を使えば体に作用する力F(t)がわかります。
接地時間は先程のサイトから0.17秒としましょう。体重は70kgと仮定しましょう。そうしますと、力F(t)は約568kgと得ることができます。
与えられている力の大きさがわかったので、加速度を得ることができます。
加速度a(t)は約8m/sec2と得られます。
腕に作用している鉛直方向の力
加速度がわかりましたので、ようやく慣性力を求めることができます。日本人男性の平均な腕の重さは4kgでしたね。ですから、4 x 8 = 32kg程の重さが瞬間的に作用していることになります。
走り込みは肩の強化として効果がある?
参考にしたデータが長距離選手のものということや、他の関節によるバッファを一切無視しているので、数値が大げさになってような気がします。野球をしている人は、長距離選手のような速度では走らないでしょうし、関節によるバッファを考慮すると、これよりも少ない値になるような気がします。
だとしても、腕の重さの何倍の荷重が肩関節に作用するわけで、その力に対して棘上筋などが抵抗するのです。そう考えると、走り込みは肩にとって良い効果があるのかもしれません。長距離を走らず、短距離、中距離でも良いと思います。しっかり腕を振って、足腰と肩を鍛えるメニューとして、走り込みを捉えてみるのも良いかもしれません。