こんにちは、きっちゃん(@I_am_Entraineer)です。
力学的にトレーニングフォームを考えるときには、モーメントアームを使って理解を進めようと考える人が多いです。筋肉は引っ張られようとする力に抵抗する性質があり、その性質を利用して硬い骨を器用に動かして、動作を成立させています。重りが骨にくっついていて、それを筋肉で引っ張るイメージをすれば良いので、モーメントを使った考え方は非常に理解しやすいと言えます。
しかしモーメントアームを使った考え方をする際には、いくつか注意する点があると思います。
モーメントアームを考える時の注意点
先程の絵を元に、考えていきたいと思います。先程の絵に出てきたものは下の図に示すように人体の一部を表現したものになります。
人間が筋肉、シャフトは骨だったり、胴体だったりしますね。プレートがおもりになります。シャフトが地面に接していますが、ここが関節になります。関節を中心にして、骨や胴体が倒れていこうとするのを、筋肉で支えているイメージですね。
「モーメントの大きさ」=「1つの筋肉への負荷」とは限らない
例えばこんなケースです。
モーメントの大きさは、その関節周りにある筋肉に作用する負荷の大きさを示していますが、それぞれ個別の筋肉にどの程度の負荷が作用するかは不明です。筋肉Aと筋肉Bのどちらに大きな力が作用しているかは、モーメントアームだけではわかりません。
シャフトが柔らかいと正しく伝わらない
シャフトが柔らかいと力がモーメントとして伝わらず、分散して他の力として作用します。
骨は十分に硬いと考えて計算が出来ます。が、胴体は脊椎の間に椎間板が存在していることから脱力すると柔らかい部位で、筋肉の緊張や腹圧を高めることで硬さを作り出しています。ですので胴体がしっかり硬い状態を作らないと、モーメントとしての負荷の大きさは計算上のものより小さくなります。
胴体の硬さについては以下もご参考頂ければと思います。
二関節筋の場合は?
二関節筋だとこんなこともあります。
筋肉の付着位置がシャフトとは違う場所にあります。この場合はモーメントの計算にシャフトが登場しません。
上図のような定滑車の状態になっています。筋肉にはこんな力が作用します。
滑車のような動きで力を作用させるには、関節がよっぽどしっかりはまっている必要があります。股関節はこのような動きができる関節と思われますが、肩関節ではこうはいかないでしょう。大腿四頭筋やハムストリングスで起きている現象といえます。
まとめ
モーメントアームを使うと全体の力の作用がわかりますが、それぞれの筋肉にどのように力が作用しているかは中々わからないものです。モーメントアームはあくまで目安で、個別の筋肉への作用にはもう少し詳細な考察が必要であることに注意しましょう。