こんにちは、きっちゃん(@I_am_Entraineer)です。
ベルトを使うと怪我の防止になったり、挙上重量が向上するという話があります。研究ベースで確認されている効果については、Athletebodyさんの記事が詳しいのでこちらを参考して頂ければと思います。
この中で、ベルトを使うと
- 腹直筋の活動が高まる
- 脊柱の圧縮が軽減される
と紹介されていて、これを踏まえて今回は腹腔内圧がトレーニングベルトで向上する理屈を考えようと思います。
このブログでは以前腹圧の理屈について考えました。
また、デッドリフトの考察を通して、腹腔内圧が脊柱の圧縮応力の低減に寄与していることを紹介しました。
では、トレーニングベルトで腹腔内圧が増加するとすれば、どんなシナリオがあるでしょうか。
腹腔内圧が向上するまでのシナリオ
これまでに紹介している通り、「横隔膜」「骨盤底筋群」「多裂筋群」「腹筋群」に張力を発生させて、閉鎖空間である腹腔内の体積を減らすことで、ボイルの法則(PV=一定)により腹腔内圧を向上させることができます。トレーニングベルトが腹腔内圧の向上に寄与するとすれば、「ベルトの張力により、腹腔内の体積が減る」ことで達成することができると考えます。しかしながら、トレーニングベルトは筋肉と違って、人間の意思だけで張力を発生させることができません。ですのでトレーニングベルトに張力を発生させられるようなイベントが必要です。
そこでパッと思い浮かぶのは、はじめからトレーニングベルトをキツく締めてしまうパターンです。確かにぎゅうぎゅうに締めてしまえばトレーニングベルトから張力が得られて一見良さそうに見えます。ところがこの方法では締めている間に息が漏れてしまいます。横隔膜が弛緩した状態で締めることになるので、単に骨格をベルトで締め上げているだけで腹腔内圧は高まらず、かつ腹腔部の断面積も小さくなるので抵抗断面が小さくなってしまいます。すなわち、曲げモーメントにより脊柱に作用する圧縮応力は大きくなる恐れがあります。
はじめからトレーニングベルトをキツく締めるのが得策でないとすると、動作中にベルトに張力が発生するようなシナリオが良さそうです。実際、腰椎を屈曲させるとお腹が出るかと思います。これは腹腔部の脊柱方向の寸法が短くなって、その分外にはらみだすからです。整理すると以下のようになります。
こうすることで、腹腔部にトレーニングベルトの張力を作用させることができます。ただし、この張力は横断面と平行方向にだけ作用します。つまり頭尾軸方向には張力が作用しません。これではカゴの網目で1方向にしか力が入っていないようなもので、腹腔内圧を十分に高めることができません。
そこで頭尾軸方向の張力として、「多裂筋群」や「腹筋群」の腹直筋などの活動を高める必要があります。Athletebodyさんの記事にある腹直筋の活動が高まる理屈としては、このようなことが考えられるのではないでしょうか。
腹直筋の張力が大きくなっている分、トレーニングベルトをすることで腹腔内圧は着用しない時より高めることができて、結果的に脊柱への圧縮応力の低減に寄与することができます。
おわりに
「じゃあ腰椎を屈曲させないと効果が得られないんだな」といって、釣りざおのように大きくしならせてデッドリフトをするのは早計です。トレーニングベルトをしないで腹腔内圧を高める際にも、外見上それほど腹部に大きな変化が見られないのと同様に、この屈曲はごく小さい範囲での話と予想されます。また、これはFail Safeとしてのシナリオであって、挙上重量を高めるために積極的に活用するものではないと考えます。ですからベルトをしても極力脊柱はニュートラルに維持して、屈曲が自覚されたら、エラーと判断してトレーニングを終了するのが正しい使い方だと思います。