以前に紹介した「ピーキングのためのテーパリング」に続き、河森先生が新著が出されたとのことで早速購入しました。

- 作者:河森 直紀
- 発売日: 2020/09/10
- メディア: Kindle版
ちなみに「ピーキングのためのテーパリング」の感想文はこちらです。(今読み返すとすごい偉そうなことを書いている気がする。。。)
この本を読んだ理由
河森先生のブログとの出会いは3,4年くらい前になります。「ウエイトトレーニング=筋肉つく」「筋トレ=根性」くらいにしか理解していなかった当時の私にしては、まさしく価値観を大きく変えられる記事の数々でして、本当に勉強になることばかりでした。「なんだ、ウエイトって理屈がものをいうんだ」「ウエイトで柔軟性が得られたり、健康になったりするんだ」「力学的に考えると色々シンプルに理解できるんだ、面白いなぁ」といちいち感動しながら読み進めたわけです。
私はアスリートでも何でもなく、仕事と家族が優先されるごく一般的なサラリーマンです。日曜に近所のソフトボールチームで遊ぶのが関の山です。それでもたまの日曜日には活躍したいですし、そのためには普段から健康でいたいなぁ、体力をつけたいなぁと感じていた私にはとてもフィットした考え方でした。
私は時間やお金の融通がヘタクソですので、バリバリのS&Cコーチから、パーソナルトレーニングで集中的にスキルを習得するような機会は作れませんでした。ただ、アスリートのように選手生命を意識した時間の使い方をする必要もありませんので、のんびり自分のペースでブログに書かれていることを咀嚼して、試行錯誤することができます。お陰様で健康で使い勝手の良い体を作るためのメニューの選択ができるようになり、自分なりにこれで良いかなと思えるフォームが獲得できて、ここ一年くらいは非常に楽しく過ごせるようになってきました。
そんなこんなで(勝手に)お世話になっている河森先生の新著で、しかもタイトルからして総論のような内容ですので、改めてウエイトトレーニングの捉え方を自分で整理するきっかけになるだろうと考えて購入しました。
ウエイトトレーニングの最も保守的な考え方
私が河森先生の発信される情報が好きな理由の1つは「ぶれない」点です。SNSやYouTubeでは様々なトレーニングが紹介されていますが、これらの中で「ぶれない」情報発信者は多くありません。どうしてもSNSやYouTubeで収益を得ることが優先されるかもしれません。あるいは、紹介している情報が伝聞であり、自身で咀嚼された内容でなくても発信されているかもしれません。今回の本では正しく「ああ、河森先生ならこうお考えになるだろうな」という内容が記載されています。
まず、トレーニングと練習における目的の違いが紹介されています。トレーニングの主目的は「体力向上」、練習の主目的は「技術向上」とあります。競技者としてはこの違いを整理しておく必要がとても重要だと思います。
その上で、ウエイトトレーニングで出来ること、出来ないことが示されています。「出来ないこと」を示している点が優しいなと感じます。つまり、ウエイトトレーニングで出来ない(と思われる)ことが何で、他の手段で補う必要があることを明快に示しているわけです。非常に丁寧な説明だと思います。
私が情報を収集している限りですが、おそらく河森先生が示されている競技力向上のためのウエイトトレーニングの考え方は最も保守的であり、最小化されたスコープであると思います。
例えば競技動作に似せた「トレーニング」は、その主目的に合致しないことから誤っているとしています。これについてはトレーナーさんの間でも意見が分かれる点のようですが、河森先生が示されたウエイトトレーニングのスコープを踏まえると、これが誤りであることが容易に理解できます。一方で、競技動作に近づけた上で外的負荷をかけることで技術向上を狙う「練習」については否定していません。
何が言いたいのかというと、何が「トレーニング」で何が「練習」なのかを曖昧にすると良い結果は望めないということです。「練習」のつもりでかける外的負荷は、「トレーニング」で適用される漸進性過負荷の原則は通用しないかもしれません。にも関わらずドンドン負荷を高めると、これが「練習」なのか「トレーニング」なのかわからなくなってしまいます。結果として当初の目的からどんどん外れていき、怪我やパフォーマンスの低下の要因になり得るのです。
もちろん「トレーニング」と「練習」の領分を明快に分かつことができるのであれば、河森先生が示された線引と異なっても良いかもしれません。問題はグレーゾーンが発生することにあると考えます。「トレーニング」と「練習」、ちゃんと線引できているでしょうか。
取り組みを整理するためのフレームワークとして使える
少なくとも、この本に書かれていることを正確に理解すれば、今やっていること、これからやろうとしていることの目的は何なのかを整理するためのフレームワークとして十分に使えます。そうすると、各種の取り組みの目的を理解して実施できるようになりますし、結果の原因分析も短時間に行うことができて、次のアクションへとつなげることができます。
もちろんこのフレームワークを自分なりに改変しても良いと思います。しかしそれはよっぽど高度なアスリートが世界を渡り歩くために検討すべき事だろうなと感じます。
サラリーマンの私としては
アスリートでなもない私がこういった本に触れている理由を以前ツイートしたので紹介します。(全然いいねつかないんですけど。。。)
草ソフトプレイヤーな私にはアスリート向けの文献なんて当然オーバースペックです。
— きっちゃん (@I_am_Entraineer) 2020年9月18日
ですがレベルの高い方を学んでおけば、自分で実践する際はそれをダウングレードするだけで大間違いや、誤った情報に惑わされることを防げるので都合が良いのです。
さらに子供が仮にスポーツを始めたら高所の視点からアドバイスができる。一石二鳥。
— きっちゃん (@I_am_Entraineer) 2020年9月18日
なんでもそうですが「視座を高める」というのは良いことです。アスリートと同じことをするつもりは毛頭ありませんが、理解しておけば他の人よりちょっとだけ質の高いことが簡単に実現できるので都合が良い、ということです。
また、これはおまけですが、子供が競技スポーツに参加した時にも怪我をさせずに長く楽しむ一助ができるかもしれません。人の親としては喜ばしいことでしょう。
というわけで、サラリーマンのサンデープレイヤーにもおすすめです。

- 作者:河森 直紀
- 発売日: 2020/09/10
- メディア: Kindle版